2025.09.23
エアコンの排熱と地球温暖化への影響ー建物改修でできる環境貢献とは

近年、私たちの暮らしや事業活動は、異常気象や記録的な猛暑日によって大きな影響を受けています。特に都市部では、エアコンの排熱が街の気温をさらに上昇させるという「ヒートアイランド現象」が顕著となり、空調機器の過度な使用が「負のスパイラル」を生み出しています。
この厳しい環境下で、建物の所有者や管理者はどのような対応が求められるのでしょうか。本コラムでは、エアコンが環境に与える影響と、それに代わる手段としての建物の断熱・遮熱改修に焦点を当て、その重要性と具体的な手法について解説します。
エアコンの排熱がもたらす現代的課題
エアコンは、室内を快適な温度に保つために、室内の熱を屋外へ運び出す装置です。このとき、単に熱を移動させるだけでなく、コンプレッサーを動かすための電力も最終的には熱として屋外に放出されます。つまり、エアコンを使えば使うほど、室内から取り除いた熱以上の熱が屋外に出てしまうという構造になっているのです。
企業に求められる環境対応の視点
SDGs(持続可能な開発目標)が社会に浸透した今、環境への配慮は、事業の社会的責任としても不可欠な要素となっています。建物の空調負荷を抑える取り組みは、単なるコスト削減にとどまらず、エネルギー消費の削減、CO2排出の抑制、そして働く人々の労働環境改善という多面的な効果をもたらします。
なかでも、建物そのものの断熱・遮熱性能を向上させる改修工事は、一度施工すれば長期にわたって効果が続くうえ、運用コストの根本的な抑制にも繋がる、非常に有効な手段です。以下に、代表的な改修手法とその効果をご紹介します。
外壁・屋根の断熱・遮熱工事の種類と特徴
【1】外断熱工法(外壁・屋根)
建物の外側に断熱材を隙間なく取り付けることで、外気の影響を建物全体で遮断する手法です。熱が伝わりやすい部分(熱橋)の発生を防ぎ、建物内部の温度変化を穏やかに保ちます。
・断熱材例:押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム など
・効果: 冷暖房エネルギー消費を最大で30~40%削減、結露の防止、建物自体の寿命延長
【2】内断熱工法(内装側)
既存の壁の内側に断熱材を設置する方法です。外断熱に比べて施工が比較的容易でコストも抑えられるため、部分的な改修や短期的なリフォームに適しています。
・断熱材例:グラスウール、ロックウール、発泡ウレタン など
・効果:一定の省エネ効果あり(外断熱に比べ、性能はやや低め)。
【3】屋根断熱・遮熱塗装
屋根の表面に遮熱塗料(太陽光を反射する塗料)を施工することで、太陽光からの放射熱を効果的に跳ね返します。これにより、屋根の表面温度を最大で20~30℃も下げることが可能です。
・材料例:アクリルシリコン遮熱塗料、フッ素系遮熱塗料
・効果:冷房エネルギー消費を最大で15%削減可能、屋根材の劣化抑制。
断熱・遮熱改修の導入による具体的なメリット
1 空調コスト削減: 外気の影響を軽減することで、空調設備の稼働負荷が減り、エネルギー使用量が大幅に削減されます。
2 環境貢献: CO2排出量の削減やヒートアイランド現象の抑制に貢献でき、環境への姿勢を社会に強くアピールできます。
3 働く人々の快適性向上: 建物全体の温度ムラが解消され、夏場の暑さや冬場の寒さが緩和されるため、労働環境が大幅に改善されます。
4 補助金・助成金の活用: 自治体によっては、省エネ改修に対する補助制度が用意されており、初期投資の負担を軽減できます。
最後に──企業価値を高めるための改修戦略を
建物の省エネ性能向上は、もはや単なるコスト削減策ではありません。これからの時代は、「未来志向の活動」として高く評価されるべき戦略です。特に近年の異常気象やエネルギー価格の高騰に対応するには、空調設備に過度に依存せず、建物そのもので熱環境をコントロールすることが非常に重要になります。
建築分野の専門家や信頼できる施工業者と連携し、環境負荷の低減と働く人々の快適性を両立させる改修計画を進めることが、建物の持続可能な成長に繋がる第一歩となります。