COLUMN コラム

2025.12.09

建物の安全を守る:塗料の正しい保管と管理で火災リスクを排除

建物の塗装工事は、その美観を向上させるだけでなく、防水性や耐久性を高めることで建物の安全性と資産価値を維持する上で極めて重要です。しかし、この塗装工事に必要不可欠な**「塗料」は、その取り扱いを誤ると、火災のリスクを大幅に高める可能性がある**ことをご存じでしょうか。

誤った塗料の保管方法やずさんな管理は、重大な事故や災害に繋がる恐れがあります。建物の安全、そして作業員の安全を守るためにも、塗装工事に関わる材料や作業は正しく管理することが不可欠です。今回は、塗料の正しい保管方法や、特に注意が必要な塗料について詳しくご紹介します。

まずは「消防法」を確認しよう:塗料は「危険物」

「塗装」と「消防法」の間に直接的な関連性を見出すのは難しいと感じる方もいるかもしれません。しかし、実際には、多くの「塗料」が消防法上の「危険物」に指定されており、塗装業者はその規定を厳守する義務があります。

消防法の目的は、「火災の予防、警戒、鎮圧を図り、国民の生命、身体、財産を保護し、火災や地震などの災害の被害を最小限に抑え、社会の安全と福祉を促進すること」にあります。この目的達成のため、消防法は危険物に対し厳格な規制を設けています。

多くの塗料は、その成分に起因して第4類の「引火性液体」に分類されます。これは、これらの塗料が引火しやすく、一度火がつくと速やかに燃え広がり、火災の被害が拡大する危険性があることを意味します。

また、これらの塗料は常温では液体ですが、揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を介して体内に吸収されやすく、皮膚からも吸収される可能性があるため、取り扱いには火災リスクだけでなく、健康被害のリスクも伴い、細心の注意が必要です。

誤った塗料管理が招く事故:過去の事例から学ぶ

引火や爆発の恐れがある塗料を、間違った管理のまま保管してしまうと、どのようなことが起きるのでしょうか。実際に業界で過去に起こった事例を参考に、その危険性を検証してみましょう。

【事例1】 塗料がしみ込んだ布から自然発火

これは、塗料を拭き取った布を作業現場のゴミ箱に入れ、その後放置したことで、布が入ったごみ箱から火災が発生した事例です。

この火災は、布に油分を含む塗料が染み込んでおり、その布をゴミ袋に入れて放置したことによって引き起こされました。塗料に含まれる油分が空気中の酸素と反応して酸化する際に熱が発生し、その熱がゴミ袋内に蓄積(熱ごもり現象)し、最終的に塗料の引火点に達して自然発火したと考えられます。

この事例から、塗料を拭き取った布やウエス、養生シートなどは、使用後必ず水に浸してから廃棄する。また、塗料が付着した可燃物は、積み重ねたりビニール袋にまとめたりした状態で長時間放置しない、といった徹底した対策が不可欠であることが分かります。

【事例2】 使用後の塗料(残塗料)から発火

これは、使用途中の防水塗料(特にウレタン防水材)を、使い切らずにポリバケツなどに入れたまま放置したところ出火した事例です。

この事故は、防水塗料の硬化を促すために、過剰な量の硬化剤を添加した結果、塗料が急激に硬化する際に発生する大量の反応熱が塗料容器内に蓄積し、引火点に達して出火したと考えられます。

硬化剤を使用して塗料を硬化させる際には、急激な発熱が伴うことを常に意識し、必要な量だけを混合し、残量塗料の取り扱いには十分注意する必要があります。

火災を起こさないための塗料管理:予防策の徹底

塗料から火災を発生させないためには、以下の予防策を徹底することが不可欠です。

  • 塗料が浸透した可燃物の適切な処理: 塗料が浸透したタオル、布(ウエス)、養生シートなどを無造作に山積みにしたり、ビニール袋や密閉容器にまとめたまま放置したりしてはいけません。このような状態では「熱ごもり」現象が生じやすくなります。酸化熱が逃げにくくなり、酸化反応が増幅し、温度が上昇して最終的に自然発火を引き起こす可能性があります。 「酸素」「温度」「密度」「接触面積」などの条件が重なることで発火のリスクが高まります。したがって、これらのリスクを回避するためには、**「塗料が付着した可燃性のものを山積みにせず、使用後は速やかに広げて乾燥させるか、水を十分に含ませた容器に入れてフタをする」**などの具体的な対策を講じ、最終的には安全な方法で廃棄する必要があります。
  • 残塗料・廃棄塗料の適切な管理: 使用後の残塗料や廃棄する塗料は、密閉して冷暗所に保管し、可燃物から離しておく必要があります。特に反応型の塗料(例:ウレタン防水材)は、硬化剤との混合比率を厳守し、一度混合したものは使い切りましょう。廃棄する際は、産業廃棄物処理業者に依頼し、適正な方法で処理することが義務付けられています。

特に注意が必要な塗料の種類

全ての塗料が自然発火のリスクを抱えているわけではありません。しかし、特定の塗料には自然発火の危険性が存在します。

具体的には、原料に油類(特に亜麻仁油や桐油などの不飽和脂肪酸類)を含む自然塗料や油性塗料、そして過酸化物を含む不飽和ポリエステル樹脂パテ(ポリパテ)用の硬化剤が該当します。これらの塗料は、空気中の酸素と反応することで酸化熱を発生させ、条件が揃えば自然発火に至る可能性があります。

塗料は、その種類によっては間違った管理や保管をしてしまうと、火災に発展する危険性が高いものです。塗装工事中にこのような事故が起きないようにするためには、塗料の特性を熟知し、正しい知識を持った信頼できる業者を選定することが何よりも重要です。

まとめ:安全な塗装工事は「塗料管理」から始まる

建物の外壁塗装工事は、美観の向上や機能性の回復に加えて、建物の安全性を高める上でも不可欠なメンテナンスです。しかし、その施工においては、塗料の正しい保管と管理が極めて重要となります。

消防法に準じた塗料の取り扱いは、火災や爆発といった重大事故を防ぐために不可欠であり、自然発火や作業員の健康へのリスクを避けるためには、適切な保管方法と注意が必要な塗料に関する正確な知識を持つことが重要です。特に、引火性の高い塗料や、硬化反応で熱を発生する塗料(例:ウレタン防水材)は、その特性を理解した上で厳重に管理する必要があります。

安全な塗装工事を実現するためには、**塗料に関する専門知識を持ち、法令を遵守した管理体制を持つ信頼できる業者の選定が欠かせません。**株式会社水蔵では、お客様と作業員の安全を第一に考え、消防法を含む関連法令を厳守した塗料の管理と施工を徹底しています。

建物の塗装工事をご検討の際は、安全で高品質な施工をお約束する株式会社水蔵まで、お気軽にご相談ください。

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