COLUMN コラム

2024.04.18

屋根・外壁の防水工事メンテナンス時期とチェック項目

 防水工事は、屋上、屋根、バルコニー、ベランダや外壁など、建物の外側のほぼすべてに関わる大事な作業です。

そんな防水工事ですが、定期的にメンテナンス補修をしないと防水効果が弱ままり、建物自体の劣化を早めてしまうことがあります。

そのため、適切な時期にメンテナンスや補修を行うことが大切になってきます。しかし、いつどんな時にメンテナンスをするべきか、タイミングが分からないことがありますよね。

この記事では、どのようなタイミングで防水工事のメンテナンスをすれば良いのか、適切なタイミングや見極めるチェック項目をご紹介します。

防水工事のメンテナンス時期とは

 建物の防水効果の寿命は一般的に10~20年といわれています。しかしこれはあくまで目安であり、工法によって様々です。ですので、実際は使用用途や建物の状態などを確認した上で時期を決めます。

防水工法の詳しい説明は「防水工事ってどんな仕事?目的・種類・工法をわかりやすく解説」をご覧ください。

今回は、施工法別にチェック項目をご紹介します。

シート防水のチェック項目5つ

シート防水とは、建物に塩ビやゴムなどの特殊な防水シートを敷いて防水層を作る工事のことです。

(1)シートに膨れがある

 防水層下の水分が気化してシートが膨らんでいる状態で、劣化の初期症状です。防水シートを接着剤にて直接下地に張り付ける接着工法の場合、防水層からの空気排出用の脱気筒を設置したとしても膨らみを引き起こす可能性があります。

この症状は、今すぐに雨漏りが起こるという状態ではありませんが、このまま放置すれば建物の劣化が進みいずれは雨漏りが発生することになりかねないため、早めの対処が必要です。

(2)シートに破れがある

 防水シートには主に「塩ビシート」と「ゴムシート」の二種類があります。塩ビシートは1.5mmから2.5mmほどの厚さで、尖った物や重いものに触れるだけで簡単に破れてしまいます。同様に、ゴムシート防水も1.2mm~2.0㎜ほどの厚さで破れやすいです。風で飛んできた物が当たることもあり、定期的なチェックが必要です。

またゴムシート防水の場合、カラスがつついたりして穴を開けるなどの鳥害もあるため、注意深く確認しましょう。

シートの破れが発生していた場合は雨水の侵入リスクを高めることになり、漏水に直結することにもなるので早急な補修工事が必要となります。

(3)シートの継ぎ目に隙間ができてきた

シートのわずかな剥がれや隙間も雨水が入り込み、徐々に劣化が広がります。さらにその隙間や剥がれが風にあおられシートが持ち上がり、下地が露出することで更にダメージが進みます。これでは雨漏りのリスクが高まってしまうため、早めの対策が必要です。         

(4)シート端部のシーリングが劣化している

 防水シートがめくれてこないようにする為に、通常はアルミなどの金物とアンカービスなどを用いて防水シートを押さえています。しかし、それだけではシートの裏へ水が回ってしまうので、ほとんどの場合はシーリング処理をしています。

このシーリング材が劣化してしまうと、防水端部の防水機能は失われてしまい、防水シートと下地の間へ入水していく原因となってしまいます。

また防水シートは年数が経つと、紫外線による劣化の促進によりシート自体の硬化が進みます。この硬化現象が進むと、入り隅の部分から剥離が始まり、防水端部を押さえている金物ごとめくれてくるという事も起こります。

そうならない為にも、定期的な点検をすることが大切となります。

(4)シートがめくれている

 シートの端や結合部は時間とともにめくれやすくなり、そこから雨水が侵入してシートと下地の間に溜まります。

この状態が続くと、下地と防水材との接着性を弱め、シートの防水効果を失わせる原因となります。

防水シートに防水性が残っていても、その防水層の下へ水が回ってしまっては意味がありません。シートのめくれも漏水に直結することになります。早めに専門業者に相談し、シートの剥がれを補修し建物を劣化から守りましょう。

ウレタン塗膜防水のチェック項目4つ

ウレタン塗膜防水とは、ウレタンゴムの樹脂を塗り重ねることで防水層を作る工事のことです。

(1)防水層の浮き、膨れ

 防水工事の下地が水分を含み、水蒸気で膨れている状態です。この状態はシート防水の膨れた状態と同じく、防水層が破れる可能性があります。長い期間気が付いていなかった場合は、雨漏りを起こしている可能性もあるため、早めの対処が必要です。

(2)表面のひび、剥離

 トップコートと呼ばれる表面の保護塗装が剥がれてきています。ウレタンゴムは紫外線に弱く保護塗装がない状態では、黄変や風化があっという間に進んでしまいます。

ですので保護塗装を剥がれたままにしておくと、更なるひび割れや剥離を引き起こし、そのままの状態で直射日光を受け続けると、防水層自体が劣化して無くなってしまいます。

保護塗装のかすれやひび割れが目立つ場合は、早めにトップコートの塗替えをすることが必要となります。一般的にウレタン塗膜防水のトップコートの塗替えの目安は、5~8年に一回を推奨とされています。

(3)防水層の亀裂

 トップコートのみならず、防水層まで亀裂が入っていると、経年劣化が進んでいる状態であり、雨漏りの危険性が高いです。また、経年劣化ではなく地震後に現れることもあります。雨漏りがなくても放置すると、亀裂から雨水が侵食し、下地が腐食する可能性があるため、早めに補修する必要があります。

(4)防水層の破断

 建物が地震などで動いた際に、防水層が破れてしまう事があります。破断が確認できた場合、その付近は防水が機能していない状態になります。このまま放置しておくと漏水のリスクが高まり建物の劣化を早めてしまうため、早急に補修する必要があります。

ウレタン塗膜防水は部分補修が可能な防水材なので、劣化の具合に応じて防水施工業者と相談し補修範囲を決定すると良いでしょう。

(5)水溜まりの有無

ウレタン塗膜防水は長期間に渡り水が溜まる場所では、紫外線劣化や加水分解の作用などにより、極端に劣化が進行します。そのため通常はウレタン塗膜防水を、水を貯めるようなタンク、プール、排水設備などに施工する事はありません。

ですが通常の屋根やバルコニーなどでも水溜まりが発生することがあります。原因としては排水ドレンが詰まっていたり、目皿の周辺にゴミが集まっていることです。排水ドレンの定期的な清掃を意識するといいでしょう。

そしてもう一つの原因は、最初の施工時に水を排水する為の勾配が十分に取れていない場合があります。この状態で水溜まりを解消することは完全には難しい場合が多い為、施工業者と入念な打ち合わせをして施工する事が必要となっていきます。

まとめ

 建物の防水工事の耐久年数は、通常10~20年が目安ですが、実際の時期は建物の使用状況や日当たり、立地条件により左右されます。

シート防水では、シートの膨れや破れ、めくれ、継ぎ目の隙間、端部の状態などがチェックポイントです。

ウレタン防水では、防水層の浮きや膨れ、表面のひびや剥離、亀裂、破断、水溜まりの有無などが重要です。これらの症状は防水効果の低下や雨漏りの危険を示しているため、早期の対処が必要です。定期的なチェックと適切なメンテナンスが、建物の防水性を維持する鍵となります。

 定期的に、専門家へ現在の状態をチェックしてもらうこともメンテナンス項目の一つとして加えておくと良いでしょう。

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